夏の終わり
夏が終わる。
日に日に短くなる昼間。
次第にくすむ、緑の艶。
そう考えれば寂しいけれど……
「終わり」は、「始まり」につながること。
私はこの季節が、一番好き。
涼やかな風が好き。
風に乗る、花の香りが好き。
名残惜しそうに降り注ぐ陽光が好き。
私に生命を与えてくれた、この季節が、好き。
「終わり」に近づいているからこそ、
どんなに小さなことでさえ、
大切に思える、この季節。
だから、
自分が生まれてきたことに、感謝もできる。
花の敷布に、手を触れると、
甘い香りが漂って。
思い切って寝転がると、
光が全身に降り注いで。
風の感触を、思う存分楽しんで。……
1人の少女に戻れる時。
それが、この、「夏の終わり」。
「心の傷が、癒されますように。…」
目を閉じて思うのは、そんなこと。
安らぎに身をゆだね、まどろんで。……
「……さん、沙織さん?」
目を覚ますと、そこには、いつもの見慣れた顔。
「星矢。…」
「うたた寝かい?」
「ん…、そうみたいね。…」
差し出された手をとり、ゆっくりと起き上がる。
「珍しいこともあるもんだなぁ。お嬢様が、こんなトコでうたた寝なんて。」
「そうかしら。…ふふっ。」
彼は気づいているかしら?
私が1人の少女になっていることを。
「ずいぶん楽しそうだな。」
「そうね、…ずいぶん楽しいわ。…うふふっ。」
ねぇ星矢、あなたは気づいてる?それとも…
…気づいてないかしら?
すると、彼は隣に腰掛けて、
「いい天気だなー。」
のんきなこと。
それがホントのあなたなのかしら?
涼しい風が、二人を包み、
それを味わうように、吸い込むと、
心地よい空気が、心に沁みる。
「オレ、この時期が一番好きだ。」
「え?」
「だってさぁ、なんか…、ほら、キレイだろ?風とか、光とか、全部。クリアっていうか、その…」
「透明感?」
「そう、それそれ。」
「…そうね、そのとおりね。…ふふっ。」
「へへっvv。」
彼が笑う。
彼の笑顔は、まぶしいくらいに輝いて、
陽光すらも反射する。
屈託のない、あどけない、彼の笑顔が、一番好き。
穏やかな時間、静かな時間。
そして、2人だけの密やかな時間。
1人では感じえない、この幸福感。
贅沢すぎる、この時間。……
すると、彼は突然立ち上がり、
「走ろう。」
「え?」
「ほらぁ、早くっ。」
私を置いて、走り出す。
あわてて跡を追っても、無駄なこと。
遠ざかる背中に、思わず叫ぶ。
「待って、星矢!」
すると、彼は立ち止まる。
やっとのことで追いつくと、
「せ、星矢!?」
ふいに抱きしめられて、言葉を失う。
「星矢?…」
「へへっ。」
そこにあるのは、あの笑顔。
「からかわないで。」
「からかってなんかないよ。…なんとなくだよ。」
「なんとなく、って…、そんなもの?」
「そんなもんさ。」
「もうっ。」
はぐらかし?
そういうことは、上手いのね。
「…手、つなごうか。」
「え?」
「イヤならいいけど。」
言うだけ言って、また私を置いて、歩き出す。
そんな彼に、仕返しがしたくなり、
「イヤだなんて言ってないでしょう?」
彼の腕に、自分の腕を、(半ば強引に)からませる。
「うぉっ…」
「イヤならいいのよ。」
彼は離さない。
明らかな、「降参」の顔。
大きなため息、そして、笑顔。
「…ったく、敵わねぇよ、あんたには。」
「敵うもんですか。」
「ハイハイ。」
愛しい人。私はあなたのそばにいるわ。
だから、あなたもそばにいてね。
ずっとずっと、そばにいてね。
終
formもずくさま
めちゃめちゃ
こっ恥ずかしきゃーーっ☆△○×#
……自分で書いててなんなんですが(汗)
とにかく沙織さんの幸せいっぱいの笑顔が書きたかったのデス。
正直めちゃくちゃ悩み、しつこいぐらい、書き直しました。
星矢と沙織の会話は、それなりにスラスラと書けたんですが、
そこまで話を持っていくのがヒッジョ〜〜〜〜〜っに困難だった。
考えれば考えるほど、凝れば凝るほど、ウザくなって、
「えぇい、こうなったら、シンプル・イズ・ベストだ!!」
で、こうなりました。
「生まれてこなけりゃ、幸せもクソもない。」と半ば開き直り、
「誕生→生命の営み→自然の摂理→季節の移り変わり」と、連想させました。
沙織さんの誕生日、9月1日は、季節の移り変わりというか、夏の終りというか、
まぁ、そんな時期とも、とれなくもないし・・・。(←強引&思い込み)
私の中で、星矢vv沙織はセットですし(笑)。
個人的にこの時期、好きなんですヨ(笑)。
日差しはあったかいけど、風が涼しくて。
洗濯とかしてたら、めさめさ気持ちよくないですか??