おじいさまの妹、叔母様はいつも私を意地悪そうな目つきで見つめていた、私はそのおば様が大嫌いだった。

そのわけはあの日、おじい様と叔母様の言い争いをこっそり聞いているうちに知ってしまった。

「どこの馬の骨ともわからぬ娘に、せっかく築いた財産を渡しておしまいになるつもり!」

 

叔母様の言葉がつきささる。

私はおじいさまの孫ではないの?

父も母もいない私を、たったひとり慈しんでくれたおじい様。

私はお嬢様ではなかったの?私はいったい何?

おじいさまは私の何?

 

自分だけが特別だと思い上がっていた私は、

本当は自分だけが世間からとりはずされていた存在だと気付く。私はお嬢様ではなかった。

この場所も、私のものではなかった。

うちに集められている数多の孤児たちと私は何のかわりもないのだ。

私はいったい何者なの?・・・

 

はじめてたったひとりで城戸邸の敷地から逃れようとしてみた。ただどこかに逃げたかった。

でも走っても走ってもなかなか門にはとどかない。

おじいさまの城戸邸、自分うちだと思っていた敷地の広さを初めて思い知らされる。

私は無力だ。こんなことでさえひとりではなにも出来ない。

そして私は自分自身でさえ何者かわからない。

 

私は城戸邸をでることを諦めて、ひとり庭の奥の林の中でひっそりと泣いていた。

孤独な身の上を、思いあがっていた自分の心を・・・

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