「見ろよ!」

彼は急に立ち止まり、遠くを指差しして見せた。

顔をあげると林の切れ間に視界が広がっている。

彼が指差した先には、この世のものとは思えないくらい美しい夕焼け。

薄紫と薄赤そしてオレンジ色がまじりあい、うっすらと白い雲がもやがかっていた。


「きれい・・・」


私はその光景にしばし見入っていた。自分を忘れて・・・

「ここは城戸邸の庭の中で1番夕焼けが綺麗に見える場所なんだ。俺だけのとっておきの場所さ!

嫌なこともなんでも忘れられるだろう?」


「・・・俺は明日からギリシャに行かなくてはいけない。」

「・・・・」

「だからこのとっておきの場所、お前にやるよ!」




そう言って、彼は走り去っていった。

 

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