My fate is your thing.




やっぱり。

星矢は、一気に下まで駆け下りていた。
あの時と、何一つ変わっていない庭がそこにあった。
違うのは、雪がないことだけ。
やっぱり、ここは初めてお嬢さんとあったところだ。

星矢は無意識のうちに、ゆっくりと沙織の隣へと向かっていた。
「綺麗だな」

気配もなくいきなり後隣から響いてきた声に、沙織は思わず振り返った。
「星矢…」

本当に綺麗な庭だと、星矢は言葉をなくして立っていた。
屋敷から辰巳がこちらを伺っていたが、沙織はそれを制した。
2人の間に風だけが吹き抜ける。しばらく経って沙織が声をかけた。

「星矢、ちょっとお茶でもどう?」
「ん? ああ」

沙織と星矢はテーブルについたが、一通りお茶を飲むとすることがなくなった。
「私…」
「俺さ、」

同時に会話を始めてしまい、気まずい空気が流れる。よくある光景。

「私、本当は謝りたかったの」
「何を?」
「今までのこと。私、初めて出来た友達があなただったの。だから、大切にしたかった。
でも、私は他の人の目を気にしすぎて酷いことをしてきたわ。ごめんなさい」
「……」
「さっきあんなことを言ったのも世界中の目が見ている前で、
取り乱すわけにはいかなかったから…」
「じゃあ、さっきのは本心じゃないってわけ?」

星矢は平静を装った言葉で、鋭い眼差しを向ける。

「半分半分、といったところよ。
おじい様の夢だった、銀河戦争に出て欲しいとは思っています。
それに、あなたのお姉様の行方はすでに追っています。
…あなたはもう私のことが嫌いかもしれないけれど、私はあなたのこと」

「それ以上、言ったら、ダメだ。あんたとは、所詮住む世界が…」

「…あなたも、他の人と同じね」
「こんな屋敷を見たら、誰だってそういうさ。
俺だって、あんたのことは嫌いじゃない。でも今は、ダメだ」
「いつならいいの?」

「雪が降ったら」

「え?」

「雪が降って、ここで俺もあんたもあの時と同じ気持ちになれたら」




*****


……周りを取り囲むのは、寒風と雪だけ。
ここにはこんなに沢山の雪があるのに。
誰にも踏まれることのない新雪が広がっているのに。

雪を見て、沙織さんも同じことを思っているだろうか。

俺とはじめてあったときのことを。



end