My fate is your thing.



星矢は啖呵をきって出て行ったものの、結局城戸邸へ戻ってきた。

星の子学園に行き幼馴染の美穂に姉の行方を聞くも、何もわからなかったからだ。
グラード財団の力でなら探すことも可能、という言葉が星矢の頭をかすめる。
…やっぱり戻るしかないのか。
星矢が珍しくまじめな顔をして考え事をしていたので、美穂は恐る恐る話しかけた。

「星矢ちゃんがTVに出れば、どこかでお姉さんが見るはずよ」
「そうか、TVに出れば姉さんが俺のことを知ってくれるはずだよな」
「多分、全世界に放送されるって新聞で読んだわ。日本にいないかもしれないものね」
「美穂ちゃん、ありがとう! オレ銀河戦争に出るよ」

星矢はぎゅっと美穂の手を握り締めた。美穂は一気に赤くなった。
気づかれないようにと、視線を少し下に向ける。

「あ…が、がんばってね、星矢ちゃん。私も応援しているわ。星華さん早く見つかるといいね」
「うん、じゃあオレ…城戸のお屋敷に戻るよ。聖衣おいてきちまったし」
「えっ、もうちょっとゆっくりしていってもいいじゃない。ダメ?」
「ん、また今度な」

そういうと星矢は走っていってしまった。
美穂はそんな星矢を見送りながら右手を頬に押し当てた。

「星矢ちゃん…」


星矢は城戸邸へ戻ると、辰巳に根掘り葉掘りギリシアでの修行のことを聞かれた。
そして、記者会見での席で働いた無礼のことで思いっきり殴られたが、星矢は全然動じなかった。
辰巳が手が早いというのは有名だったし、星矢も修行前にはよく殴られていたので慣れっこだった。
それ以前に聖闘士として帰ってきた星矢には、たとえ剣道何段といえども通用しなかった。

一通り答え終わると部屋に通された。大会期間中はこの部屋に滞在するようにとのことだった。
修行前には結構なスシ詰めだったのに、今回はVIP待遇か…。
所詮、俺たちはお嬢様のおもちゃに過ぎないのだろうか。

いろいろなことを考えながら星矢はベッドに倒れこんだ。
お嬢さん、か…。
ふと窓に目をやるともみの木が見えた。

ここんちは庭にこんなでっかい木を植えるような屋敷だもんなぁ…
星の子学園の庭にあんなでっかい木が植わってたら、一日中陰になって洗濯物乾かねぇよ…。

植えられている木一つを見るだけで、「お嬢様の現実」と「自分の現実」を比べることが出来るくらい、
この屋敷はすべてが豪華だった。
星矢は起き上がって窓辺へ近づいた。そこには新緑が美しい庭が広がっていた。
芝がきれいに整えられ、一流の庭師によって手入れされた植物たち。

庭に見惚れていた時、木陰に誰かいるのを見つけた。
髪の長い…このお屋敷のお嬢様だった。
沙織は何をするわけでもなく、木陰にたたずんで前方を見つめていた。
目のいい星矢は沙織があまり浮かない顔をしているところまで見えてしまった。
屋敷側にあるベンチとテーブルにいたのだろう、そこにはティーセットが広がっていた。

星矢も沙織の視線の先を見つめる。
そこには何があるわけでもなく…何もない…芝の広がる…

…!

もしかして、ここってあのときの…あの冬の……に…わ?

…だったか?