深緑の章

「沙織さんがお前を待っているぞ。」





この言葉を聞いた星矢は一瞬うろたえていた。

相変わらずバカな奴だ。


お前の気持ちに気付いていない聖闘士なんて、この聖域にいるのだろうか。

誰にもバレテいないと思っているのは、星矢本人だけかもしれない。




だが言ってしまった後で、なんとなく自分の中に違和感が残った。

この気持ちは・・・?




沙織さんを星矢にとられてしまう寂しさ?

そりゃあ、沙織さんは俺達の女神だし、一緒に戦ってきた大切な仲間だ。

もしかして多少の恋心もあったかもしれない。



それとも星矢を沙織さんのとられてしまう寂しさ?

ふっ、 弟に彼女ができたときの寂しさっていうのは、

こういうものなのかも知れないな。





でもあの女(ひと)は十分苦しんできた。




・・・・幸せにしてやれよ、星矢。







そう考えていたらなぜか、

俺は、五老峰できっと祈っているであろう、

彼女に会いたいと強く願っていた。

 

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