<星空の下で>


「きれいな星空・・・。」
こんな満天の星空を見るのはいつ以来かしら?
自分がアテナだと自覚したばかりの頃、白銀聖闘士の烏星座のジャミアンに攫われたところを星矢に助けられ、その腕の中で目を覚ました時、真っ先に目に入ったのが美しい天の川だった。これから自分と星矢たち聖闘士が歩む道を暗示しているような星空。
ギリシャの聖域も周りに光がないため、星空は美しかった。
でも・・・こんなふうに何の心配もなく星空を見るのは本当に久しぶりであった。おそらく、幼い時以来・・・。


「今夜、何にも用事がないなら、夜8:00に迎えに行くから。」
今朝、突然、一輝が言った。星矢提案のデート計画は一輝は忘れてしまったのかあるいは覚えていても実行するつもりがないのだと思っていた。
どこに行くのか?とこちらから聞く前に、汚れてもいい格好、暖かいものを着て待っているようにと一方的に言われ、そのまま電話は切れてしまった。


とりあえず、ズボンにタートルネックのニットアンサンブルを着てきたが、夜が更けるにしたがって気温がだんだん下がってきた。薄手のカーディガンから寒さが肌に伝わってくる。沙織は腕を抱えた。

突然、バサッと頭から何かかぶせられた。
「それ、着ていろ。」
「一輝!?」
「そんな薄物じゃ寒いだろう?暖かい格好をして来いと言っておいたけど、どうせ着てこないだろうと思って用意しておいたんだ。洗濯してあるからきれいだぞ。」
横を向いたまま一輝は言う。
「一輝・・・?ありがとう。」
かなり大きめだったけど、すごく暖かかった。物理的な暖かさだけでなく、心の底から暖かかった。

「まさか、一輝、あなたと2人でこうして星空を見るなんて思ってもいなかったわ。」
都心では滅多に見られない流れ星を数えながら、沙織は言う。
「俺じゃ、不満か?」
「いいえ、そうじゃなくて、何て言うのかしら。とっても安心感があるの。」
そう言って、沙織はもう少し一輝の方に寄ると、そのまま仰向けに横になった。
言葉数が少なく、それゆえに誤解されることの多い一輝。だけど、一緒にいるとさらに強く感じる安心感。これこそ、まさに弟の瞬が慕って止まない男の強さと優しさなのだろう。漆黒の空に輝く無数の宝石に目を奪われながら、沙織は思った。
(END)

う〜ん・・・。一輝兄さんと沙織さんというのもなかなか考えつきません。by綾乃川



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